同じ頃、首都の海軍司令本部の一室で、レイモンドは一人、執務卓に座っていた。
机の上には、小さな化粧箱。
蓋を開ければ、銀色に輝く真珠のイヤリングが一対並んでいる。
それは本来なら、既にソフィアに渡しているはずのもの。任地先の港で手に入れ持ち帰った、彼女へのプレゼントだった。
けれど、未だに渡せないままでいる。
(……何をやってるんだ、俺は。情けない)
この四日間、自分のソフィアに対する言動はあまりにも不自然だった。
言葉は詰まるし、視線一つ合わせられない。もし再び彼女の口から『離縁』の二文字が出たら、どうしようかという恐ろしさのあまり、話しかけることすらできなくなった。
当然、ソフィアはそんな夫の不可解な様子に気付き、気遣ってくれるのだが、それさえも全て演技なのかもしれないと考えると、何も言えなくなる。
そんな自身の不甲斐なさに、ほとほと嫌気がさしていた。
(このままでは、彼女を惚れさせるどころの話ではない。嫌われるのも時間の問題だ)



