旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜


 オスカーの瞳には、純粋な心配の色が浮かんでいた。
 彼は、ソフィアとレイモンドが契約結婚であることを知らない。イシュとの関係も知らない。
 あくまで一般的な夫婦として、不仲ゆえに離縁を考えているのだと思っているのだ。そして、自分が本当はイシュと心を通わせているのかと、案じているのだ。

 ソフィアは膝の上で拳を握りしめ、震える声で否定する。

「……違います。旦那様は、とてもお優しい方です。わたしによくしてくださいますし、不仲などという事実はございません。イシュのことも……彼とは、ただの友人です」
「なら、離縁するという話は嘘なんだな?」

 オスカーが身を乗り出す。

「母さんの勘違いということでいいんだな? イシュと一緒に行くというのも……」
「…………」

 ソフィアは言葉に詰まった。
 ――否定しなければ。全て母の勘違いだと言わなければ、そう思った。
 どうして母に情報が洩れてしまったのかはわからない。けれど、オスカーを心配させるわけにはいかない。

 だが、自分を純粋に心配してくれている兄に、簡単に嘘をつくこともできなかった。

 レイモンドとの結婚は契約であり、その期日はあと三週間に迫っている。離縁する予定であることは、紛れもない事実。
 それに、もともとイシュと共に帝国に行くということになっていたのも、紛れもない真実だ。

 沈黙するソフィアを見て、オスカーは苦渋に満ちた顔をした。
 妹の沈黙が何を意味するのか。聡明な彼には察しがついたのだろう。

「……そうか」