旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜



 そもそもふたりは、契約を交わす際、離縁の理由について深く話し合うことはなかった。
 決めたことと言えば、お互いに“浮気やギャンブルなどの欠格事由はない”ようにすること。また、"白い結婚"であることを理由に、円満離婚にする――ということだけ。

 円満離婚の中には、当然、"性格の不一致"も含まれる。
 つまりレイモンドは、離婚理由を"性格の不一致"に持っていくつもりでいるのかもしれない。

(とは言え、直接説明されたわけでもないし、何事も決めつけは良くないわ。やっぱり、一度ちゃん話し合わないといけないわね)



 そんな風に考えていると、隣の席の夫人に声をかけられた。

「そう言えば、閣下がお戻りになったと聞きましたわ」

 閣下とはレイモンドのことだ。
 ソフィアは笑みを返す。

「ええ、四日前に」
「今度はいつまで首都におられる予定ですの?」
一月(ひとつき)ほどと聞いておりますわ」
「まあ、それは良かった! でしたら、ぜひ来週、お二人でうちにいらしてくださいな」

 夫人は嬉しそうに続ける。

芝居一座(げきだん)を呼んでおりますの。アマチュアなのですけれど、会場で寄付金を募って、それを孤児院に寄付しようかと考えていて」

 その発言に、他の夫人たちは盛り上がった。

「まぁ、素敵。慈善事業ですのね」
「夫人は本当にお優しいわ」
「わたくしも是非寄付させていただきたいわ。ご招待いただけるかしら?」

「ええ、勿論ですわ。皆さま、ぜひいらしてください。――侯爵夫人も」

 その言葉に、ソフィアは、

(近ごろの旦那様の様子では、断られるかもしれないわね)

 と思ったが、笑みを崩さず当たり障りなく答える。

「夫に確認して、お返事させていただきますわね」