「……わたくしには、よくわかりません。だって、すべては演技だったのですよ? 旦那様だって最初はそうでしたよね? わたくしと同じ、演技だったんですよね? もしそのときの旦那様が好きだと言われたら、旦那様はその言葉を信じられるのですか?」
堪えきれずに問いかける。するとレイモンドは「難しいことを聞く」と、困ったように微笑んだ。
「信じられるかと言われれば、正直微妙だな。だが、気づいたら好きになってしまっていたんだ。それ以上の理由が必要か?」
「……っ」
瞬間、心臓がどうしようもないほど締め付けられる。レイモンドの熱を帯びた眼差しが、優しい声が、痛くて辛かった。
ソフィアが何も答えられずにいると、レイモンドは気を遣ったのか、ソフィアの前に右手を差し出す。
「風が強くなってきたな。そろそろ屋敷に戻ろう」
「……はい」
ソフィアは一瞬迷ったが、小さく頷き、レイモンドの手のひらに右手を重ねた。
傾きかけた夕陽が二人の影を長く伸ばす。
ソフィアは結局答えを出せぬまま、繋がれた手の温もりを感じながら、レイモンドと共にゆっくりと丘を下っていった。



