旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜



 その後、二人はレストランに入ったが、ソフィアは食事の間じゅう、ほとんど上の空だった。

 劇的な出来事があったわけでもない。ただ瞳の色を褒められただけ――それだけなのに、どうしてこんなにも頬が熱いのだろう。

 胸の奥に小さな灯りがともる。と同時に、不安が広がった。

(旦那様はわたしのどこが良くて、こんなことを言うのかしら……。正直、好かれる理由が少しもわからない。……聞いたら教えてくれるかしら? ――でも聞いてどうするの? あとひと月足らずで離縁するのに、知ったところで何の意味もないじゃない)

 とはいえ、このままでは何も決められない。心が前へ進めない。
 きちんと向き合わない限り、このモヤモヤが晴れることはないのだろう。


 レストランを出て、通りで馬車を捕まえようとしているレイモンドの背に、ソフィアは声をかけた。

「あの――旦那様」
「どうした?」
「わたし……旦那様にお尋ねしたいことがあるのです。少し、お時間をいただけますか?」

 改めて問いかけると、レイモンドは驚いたように目を見開いた。だがすぐに頬を緩め、穏やかに答える。

「ああ、もちろんだ。君のためなら、いくらでも」