――数日後。
ソフィアは社交の一環として、前々から招待されていた、フィッシャー伯爵夫人のお茶会に参加していた。
午後の陽光に包まれたテラスには、白いクロスの敷かれた丸テーブルが設置され、陶器の皿に盛られた焼き菓子と、香り高い紅茶が用意されている。
参加者は、ソフィアを含め五人。
皆、優雅にお茶を嗜みながら、社交界の噂話に花を咲かせていた。
ソフィアはその会話に、微笑みを絶やさず耳を傾けていたが、心の中では別のことを考えていた。
(最近の旦那様、何だか様子がおかしいのよね。聞いても"何でもない"と答えるばかりで……お仕事のことで悩みでもあるのかしら?)
ここ数日、レイモンドの様子は明らかにおかしい。
朝食の席では、何か言いかけては口をつぐみ、視線を逸らす。
ティータイムでは話しかけてもどこか上の空で、「すまない、もう一度言ってくれるか?」と毎度のように聞き返される。
夕食のときも、まるで演技するのを忘れてしまっているかのように、長い沈黙が続く。
そんなレイモンドを、ソフィアは少なからず心配していた。
契約結婚とはいえ、三年も共に過ごせば自然と情は湧くものだ。気にならない方がおかしいだろう。
(今までなら、聞けば何かしら答えてくださっていたのに、ここ数日はそれもないし)
ソフィアは頭を悩ませる。けれど、ふと、頭の片隅に別の考えが過ぎった。
(それとも、離縁を目前に控えたわたしとは、もう、“いい夫婦を演じる必要はない”ということなのかしら)
なるほど。だとすれば、レイモンドのそっけない態度にも納得がいく。



