それから買い物を終え、店を出た二人は再び並んで歩き出す。と途端に、レイモンドが愉快そうに声を上げた。
「――にしても、随分な量だったな。預かってもらえることになって良かった」
ソフィアはかあっと顔を赤く染め、思わず両手で顔を覆う。
「……申し訳ありません。つい夢中になってしまって」
――つい先ほどまで、ソフィアは品定めに没頭していた。その時間は一時間にも及んだほどだ。
そうして会計を済ませたところで、ソフィアはようやく気がついた。とても一人では抱えきれないほどの品を選んでしまっていたことに。
(え? 今からこれを持って歩くの……?)
いつもは裁縫店が目的地だったため、買ったらすぐに帰宅していた。だが今日は違う。それに、いつもなら一緒に荷物を持ってくれるアリスもおらず、この私物をレイモンドに運んでもらうのは気が憚られた。
だが後悔が胸をよぎった瞬間、レイモンドが店員に声をかけてくれた。「後で使用人に取りに来させる。それまで預かってもらえないか?」と。
店員は快く応じ、包みは奥へ運ばれていった。
「屋敷まで運んでもらうこともできたんだがな」
「いえ、さすがにそれはお店の方に申し訳ないです。家族経営のようでしたし……」
「……君はときどき、本当に貴族らしくないことを言うな。まぁ、そういうところもいいんだが」
「……え?」
予想外の言葉に、ソフィアはぎくりとした。〝貴族らしくないところがいい〟――とはどういう意味だろう。もしや商売人としての裏の顔が出てしまったのだろうか。
ソフィアレイモンドの横顔を呆然と見つめる。
しかしレイモンドはそ知らぬ顔で、優しく視線を落とした。
「それに俺は、君の新たな一面を見れて嬉しいんだ。俺に少しは心を開いてくれたのかと」
「……!」
ソフィアはごくりと息を呑む。〝心を開く〟――その言葉に困惑した。
(わたしが、旦那様に心を開いている……?)



