「……え? わたしがイシュを……愛している?」
「……なるほど。〝イシュ〟か。あの男も、君を馴れ馴れしく〝フィア〟と呼んでいた。……やはり、君はあの男と恋人関係というわけか」
「――ッ」
刹那、ソフィアは素っ頓狂な声を上げてしまいそうになった。
レイモンドの口から放たれた言葉が、あまりにも想定外だったからだ。
(確かに、わたしはイシュと共に帝国に渡る予定でいたわ。でもその理由は、わたしが彼を愛しているからじゃない。まして、恋人同士だなんて有り得ないわ)
彼に「外を歩こう」と誘われたときから――否、首都の仕立て屋でイシュから「閣下に何か言われなかった?」と尋ねられたあの瞬間から、ソフィアはずっと不安を抱えていた。
自分とイシュとの関係を、レイモンドに知られてしまったのではないか。だからレイモンドは、何も言わずに任務に発ったのではないか――そんな疑念が胸の奥に燻っていた。
そしてその不安は、「イシュとの関係を知っている」という言葉を聞いたとき、確信へと変わった。
レイモンドは、自分とイシュが「サーラ・レーヴ」に関わるビジネスパートナーであることや、契約結婚の満了後に帝国へ渡航する計画――その核心に触れてしまったのだと。
そして、それが何らかの形で実家に伝わることを、何よりも恐れた。
けれど、レイモンドが口にしたのは「恋人関係」で――あまりにも的外れな疑いに、ソフィアは驚きと同時に、拍子抜けするような安堵を覚えた。
「どうして、そのようなお考えに……? 彼とは、そういう関係ではありませんわ」
イシュに抱いているのは友情と信頼であり、決して恋情ではない。それはソフィア自身が一番よくわかっている。
だが、レイモンドの疑いの目は変わらない。
「ならば、なぜ舞踏会の夜に二人きりでいた? 仕立て屋で会っていたこともそうだ。そもそも、彼は俺と君の契約結婚のことを知っていたんだぞ。それについてはどう説明する?」
「!」



