旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜



 堪らず、ソフィアの瞳が大きく見開く。海を見ていた彼女の顔が、ゆっくりとレイモンドを仰ぎ見た。

「彼が、旦那様にそんなことを……?」
「ああ。〝どうせ残りは一ヵ月。今すぐ離縁しても変わらないだろう。今すぐ別れるのが君のためだ〟と、そう言われた」
「…………」
「だが俺は受け入れられなくて……君を、使用人に見張らせたんだ。だから、君が仕立て屋で、あの男と会ったことも知っている」
「――っ」

 ソフィアの瞳が揺れる。悲しみか、怒りか、それとも別の感情か。
 レイモンドには判別できない。ただ、彼女を失望させたことだけは痛いほどわかった。

「……本当にすまないと思っている。だが、そんな真似をしてでも確かめずにはいられなかった。君とあの男との関係を……疑わずにはいられなかった」

 言葉にしたことで、ようやく自分の弱さを認められた気がした。
 レイモンドは深く息を吸い込み、夜空を仰ぐ。群青の空に、星がひとつ、またひとつと瞬きを増していく。

 その光を見上げながら、レイモンドはついに、恐れていた問いを口にした。

「答えてくれ、ソフィア。君は……あの男を愛しているのか?」

 問いかけた瞬間、胸を抉るような後悔が押し寄せる。聞かない方がよかったのではないか。だが、知らずに進むことはできない。
 レイモンドはソフィアの瞳を真っ直ぐに見据え、さらに問う。

「君は俺と別れた後――あの男のもとへ行くつもりなのか?」