眠れぬ夜を抱きしめて


短い秋が過ぎると、あっという間に冬がやって来る。

12月に入ると、社内では毎年恒例の忘年会の話で盛り上がっていた。

「今年から事業部別になったし、もっと良いお店にしちゃう?」
「いいねぇ〜!どこにしようか?」
「駅前に出来たお洒落な居酒屋とかは?」

そんな話が花咲く中、わたしは黙々と資料作りをしていた。

すると、2つ隣のデスクから椅子に座ったまま、椅子の底についたタイヤを転がし大知が近寄って来た。

「なぁ!椿沙も参加するよな?忘年会!」

そう言う大知の言葉に一度手を止めたわたしは、ふと大知の方を振り向くと「今年は行かないかな。」と答えた。

「えっ!なんで?!」
「んー、何でって、別に強制参加なわけじゃないでしょ?」
「いや、まぁ···、そうだけど。」

そう言って、少し残念そうな表情を浮かべる大知。

実は少し前から、匠海と話し合い、今年はお互い忘年会に参加をしないという話をしていたのだ。

元々、大勢での飲み会があまり好きではないわたしたち。
どうしても強制参加のような風情が流れていたが、その流れを切り替えるべく、役職がついたわたしたちが率先して不参加にする事にしたのだ。

「あ、実は、今年は俺も不参加。」

そう言ったのは、柳田課長だ。
それを聞いた飯塚さんが「えぇー!柳田課長まで?!」と言った。

「いやぁ、まだみんなには伝えてなかったんだけど、実は第三子を授かってね。」

突然の柳田課長からの報告に事務所内のみんなが驚き、それと共にお祝いムードになる。
"まだみんなには伝えてなかった"と柳田課長は言ったが、実はわたしだけは知っていた。

わたしが主任に昇進し、悪阻で体調がすぐれない奥さんのサポートの為に有休を取ったり、早退する事が増えた柳田課長の業務を陰で支える為に先に教えてもらっていたのだ。

「柳田課長!それなら尚更、忘年会参加しなきゃダメじゃないっすか!おめでたいんだから、お祝いしましょうよ!」

そう言ったのは、相変わらずの飯塚さん。
そんな飯塚さんの言葉を聞いた小林さんが「飯塚さん、そんなをだからバツ2になるのよ?!」と言い、そのあとに田中さんが「どうして柳田課長が奥さんの妊娠を理由に不参加にするか分からないの?!」などと責めていた。

なぜ怒られているのか分からない様子の飯塚さんは「えっ、なんで?俺はただおめでたい事だから···」とブツブツ言いながら小さくなっていた。