「匠海ちゃん、お疲れ様!素敵だったわ!ありがとねぇ〜!」
こちらに向かって歩いて来る雨笠さんに向かい、賢ちゃんが言う。
すると、雨笠さんは遠慮がちに「いえいえ。」と言った後、ふとこちらに視線をやり、わたしと目が合った。
そして、雨笠さんはわたしを見て「あっ。」と言い、わたしは挙動不審になりながら「お疲れ様です。」とペコッと頭を下げた。
そんなわたしたちのやり取りを見た賢ちゃんは、「あら?知り合いなの?」と言って、雨笠さんとわたしを交互に見た。
「はい、同じ会社の方です。」
そう言う雨笠さんの言葉に、彼がわたしを知っていてくれている事に驚いてしまう。
雨笠さんは「隣、失礼していいですか?」とわたしに確認をし、わたしの「ど、どうぞ。」の言葉でわたしの隣の椅子に腰を下ろした。
「やだぁ!匠海ちゃんと椿沙が知り合いだったなんてビックリ!」
「本当ですね。」
「椿沙は、あたしの元同居人なのよ!」
「え、そうなんですか?」
しなやかで落ち着きのある声色で雨笠さんがわたしに問う。
わたしは恥ずかしさから、雨笠さんを直視出来ないまま「は、はい。つい最近まで。」と答えた。
「匠海ちゃんはね、たまにうちの店にピアノ弾きに来てくれてるのよ!今日はクリスマスイブだし、盛り上げる為に頼んじゃったの!せ〜っかくのイブなのに、ごめんなさいねぇ〜!」
賢ちゃんがそう言うと、雨笠さんは優しく微笑み「いえ、呼んでいただいて光栄ですよ。」と言った。
「だって、匠海ちゃんだって女の一人や二人くらい居るでしょ〜?」
「やだなぁ。二人なんて居たらおかしいじゃないですか。それに、一人すら居ませんよ。」
「そんなわけないじゃな〜い!こんなに良い男なのに!」
「いやいや、本当に居ませんって。」
賢ちゃんのノリにも爽やかに返していく雨笠さんは、ちょっとした余裕があり、クリスマスイブの雰囲気のせいもあるかもしれないがより素敵に見えてしまった。



