眠れぬ夜を抱きしめて


一泊二日の旅行もあっという間に終わり、いつもの日常がまた始まる。
しかし、そんな日常でさえも愛おしく、匠海と日々一緒に過ごせている事にわたしは感謝した。

月日は流れ、9月になると辞令が出て、わたしは主任に昇進した。
それと共に今回トールガーデン社との共同プロジェクトを成功させた匠海は、早々に課長へと昇進したのだった。

「雨笠くん凄いよね〜、29歳で課長だって。」
「さすが出来る男は違うね〜。」

そう話す営業事務補助パートの小林さんと田中さんは、チラッと飯塚さんの方を見ていた。

「えっ!何で俺の方見るんすか?!」

そう言う飯塚さんに小林さんは「飯塚さんって、何歳だっけ?」と訊く。
飯塚さんが「今年で36っすけど···」と答えると、小林さんと田中さんは何か納得した様子で「そうよね〜。こんなんじゃね。」「そりゃ、嫁に2回も逃げられるわよね〜。」と毒を吐いていた。

「椿沙、主任昇進おめでとう。」

そう声を掛けてくれたのは大知。
大知とも色々あったが、今までと変わらず、同期としての仲は何も変わらない。

「ありがとう。」
「まさか、椿沙に追い越されるとはなぁ〜。いや···、まさかでもないか。旦那様は、課長に昇進したらしいしな。」
「まだ旦那様ではないけどね。」
「でもその内、そうなるんだろ〜?」
「さぁね。」

相変わらずの大知との掛け合いは安心する。

いまだに、冗談めいて「俺にしとけば良かった!って後悔させてやる!」と言ってくる事もあるけれど、大知は強引にわたしが嫌がる事をする人ではない事はよく分かっている。

そして、それが大知なりの優しさだという事もわたしは理解していた。