眠れぬ夜を抱きしめて



あの日から、わたしの気持ちは安定した。
そして匠海もわたしの気持ちを第一優先にし、宝生さんとは仕事以外の付き合いをやめ、必要のないお誘いを断ってくれるようになった。

「そんな事して、大丈夫?関係が悪くなったら、仕事やりづらくない?食事くらいは···」

わたしは匠海にそう言ったが、匠海は「大丈夫だよ。椿沙より大切なものなんて無い。仕事より、椿沙を失う方が怖いから。」と言ってくれた。

7月になると、やっと匠海の仕事も落ち着き、トールガーデン社との共同プロジェクトも大成功を納めたようだった。

宝生さんは最後まで匠海に執着していたようだが、最後にハッキリと匠海がお断りの言葉を口にすると、宝生さんは悔しそうに真っ赤な顔をして帰って言ったと匠海が教えてくれた。

すると、ある日。
匠海からとある提案をされた。

「なぁ、椿沙。仕事も落ち着いたし、二人で有休取って、旅行にでも行かない?」

配属事業部が違うわたしたちは、休暇を合わせて取る事に問題なかった。

匠海の提案が嬉しかったわたしは「行きたい!」と返事をし、二人で旅行へ出掛ける計画を立て始めた。

旅行と言っても、飛行機に乗るほどの旅行ではなく、車で行ける範囲だ。
二人での旅行は初めてで、旅行自体もあまり行った記憶がないわたしはワクワクが止まらなかった。

そして、わたしたちが決めた旅行先は函館。

車で行く距離にすればかなり時間はかかるが、ドライブデートというものをしてこなかったわたしたちには新鮮だった。

ドライブを楽しみながら函館を目指し、昼はロッキーピエラのハンバーガーを食べた。
夜は函館山へ上り、二人で夜景を見たあと、ホテル付近にある居酒屋で新鮮な海の幸を食べる。

ホテルへ戻ると温泉に入って、あとは部屋でのんびり過ごした。

「あっという間の一日だったなぁ。」
「そうだね。でも、こんなに匠海と一緒に過ごせたの初めてだったから、凄く幸せ···」

わたしはそう言うと、ベッドに寝そべる匠海にくっついた。

「俺も幸せだよ。あー、このまま時間が止まってくれないかなぁ〜。」

匠海はそう言いながら、わたしを抱き寄せた。

「黒魔道士になれば出来るんじゃない?」
「あぁ!"ストップ"魔法使って?」
「そうそう!」
「そうだなぁ〜!じゃあ、黒魔道士目指さなきゃなぁ!」

そう言いながらわたしたちは笑って、そのまま二人で幸せな一夜を過ごした。