眠れぬ夜を抱きしめて


「やっぱり···、わたしが匠海を我慢させ過ぎちゃってるから······」

わたしが呟くようにそう言うと、賢ちゃんは強めの口調で「椿沙?」と言った。

「匠海ちゃんは、そんな男じゃないわよ?それは椿沙だって、よく分かってるんじゃない?」
「それは、そうだけど···、相手が相手だから、不安で······」
「あんな女、椿沙の敵じゃないわよぉ〜!確かに、宝生みたいな女に弱い男はたくさん居るわよ?でもね、匠海ちゃんは違う!椿沙、忘れたのぉ?匠海ちゃんがモテてきたのは今に始まった事じゃないでしょ?それでも他の女に目移りした事なんて無い!椿沙だけを見てくれてきたでしょ?」

説得力のある賢ちゃんの言葉に、不安だったわたしの気持ちが少しずつ落ち着いていく。

(確かに、言われてみればそうだ。匠海はいつもわたしの事だけを見てくれてた。)

「椿沙の方が何倍も良い女よ?それに、もし匠海ちゃんがダメでも、椿沙の事ずっと好きで居てくれてる男いるんでしょ〜?確かぁ、大知くん、だっけ?」
「···大知は、ただの同期だから。」
「でもね、もしかしたら、匠海ちゃんだって椿沙と同じ気持ちかもしれないわよ?」
「どういう事?」
「だって、匠海ちゃんは大知くんが椿沙に好意があるの分かってるんでしょ?自分が忙しくて構ってあげれてない内に、椿沙を取られたらどうしよぉ〜とか焦ってるかもしれないじゃない!」

賢ちゃんの事に(そうなのかな···)と考えるわたし。
すると賢ちゃんは、穏やかな声でわたしを宥めるように「今は気持ちがすれ違っちゃってるだけよ。」と言った。

「もし今の状況がツライなら、匠海ちゃんに思い切って今の気持ちをぶつけてみなさい?いくら疲れていても、匠海ちゃんならちゃんと聞いてくれて、受け止めてくれるはずよ?そこで"疲れてるから"とか言って向き合ってくれないなら、それまでの男って事。」

賢ちゃんはそう言ったあと、「ずっとモヤモヤしてるくらいなら、自分からぶつかってみるのも大切よ?」と言い、わたしの肩をポンッと叩いた。

「さぁ!今日は好きなだけ飲みなさい!あたしの奢りよっ!」

わたしを元気付けようと、賢ちゃんが明るい口調でそう言ってくれているのが伝わってくる。

わたしは「じゃあ、いっぱい飲んじゃおー!」と言って、カルピスサワーをゴクゴクと音を立てながら飲むと、グラスを持ち上げて「賢ちゃん!おかわり!」と言った。