「匠海ちゃん、本当に残業で帰り遅いだけよね?」
「多分···。わたしが寝る時間の前には、必ず帰って来てくれるし。」
わたしがそう言うと、眉間にシワを寄せていた賢ちゃんの表情が緩み、「それなら大丈夫ね!」と言って、安心したようだった。
「匠海ちゃん、椿沙が夜に一人で寝るの苦手なの分かってるんでしょ?」
「うん、それは話したから。」
「それを分かってるから、寝る前には帰って来てくれてるのよ!忙しくても、ちゃんと椿沙の事を想ってる証拠じゃな〜い?」
賢ちゃんの言葉に(確かに···)と納得する一方で、わたしにはまだ不安に感じている事があった。
「でもさ、その宝生さん···、結構グラマーだよね?出るとこ出てるというか···」
「あぁ〜、まぁ、そうねぇ。でも必要以上に露出してて、あたしは下品に見えるけど。」
「男の人って、あんな感じの女性に弱いものじゃないの?」
わたしがそう言うと、賢ちゃんの目線がわたしの顔から徐々に下に下がり、そして「ん、まぁ、椿沙はオッパイもお尻も無いものね。」と言い出した。
「うるさいなぁ!そんな事、自分でもよーく分かってますぅ!」
「ちょ〜っとそんな怒らないでよぉ〜!ただの冗談よ!」
賢ちゃんはそう言って「あはは〜!」と笑った後、突然スッと表情が無くなり、わたしを見ると「え、まさか椿沙、もしかして······」と言い出した。
「ん?」
「まさかのまさかだけど···、まだなの?」
「まだって?」
「だから、匠海ちゃんとの夜の運動会よ!」
カルピスサワーを飲みかけていたわたしは、賢ちゃんの言葉に吹き出しそうになる。
わたしは顔がカーッと熱くなるのを感じながら、「ちょっと!賢ちゃん!変な事言わないでよぉ!」と言った。
「変な事じゃないわよ〜。大事な事よ?」
賢ちゃんの言葉に恥ずかしくなったわたしは、黙ったままカルピスサワーに口を付ける。
すると、賢ちゃんはわたしの様子から「やっぱり、まだなのね?」と訊き、わたしはその賢ちゃんの問いに静かに頷いた。
「付き合い始めてから、どれくらい経つっけ?」
「5カ月くらいかな。」
「それで、まだ匠海ちゃん我慢してくれてるのぉ?!」
驚く賢ちゃんとわたしは目を合わせられず、ゆっくりと頷く。
賢ちゃんは「それは凄いわぁ···、男が好きな女と一緒に寝てて、5カ月も我慢できるだなんて、並大抵の事じゃないわよぉ?」と感心したように言った。



