天候の為か、客数が少なくいつもよりも静かな19時の"SEVENS BAL"。
わたしはカウンター席に顔を乗せながら、ぼんやりとしていた。
「はぁ······」
「なぁによ、そんな難しい顔しちゃって。匠海ちゃんと何かあったのぉ?」
わたしの目の前にカルピスサワーを出しながら、賢ちゃんが言う。
わたしは顔を上げると、カルピスサワーが入ったグラスを両手で包み込んだ。
「何かあったというか···」
「でも、何もなかったら、そんな顔にはならないでしょ〜?」
賢ちゃんの言葉に何も言い返せないわたし。
わたしの脳裏には、匠海と宝生さんの事、それから大知に言われた言葉がチラついていた。
「別に、喧嘩をしたとかじゃないの···、その前に、最近全然まともに会話出来てないから。」
「えっ?あんたたち上手くいってたんじゃないのぉ?」
「実は今、匠海が取引先との共同プロジェクトで忙しくて···、匠海は取引先に出向く事が多くて残業ばかりだし、あまり二人の時間が無いんだぁ。休みの日は、疲れて寝ちゃってるか、取引先の担当さんとの接待の為に出掛けちゃったりするし。」
「あら、匠海ちゃんかなり忙しいのね。最近、主任に昇進したとは聞いてたけど。」
賢ちゃんはそう言って、わたしが大好きな賢ちゃんお手製の大根のレモン漬けを出してくれた。
「うん···、まぁ、ただ忙しいってだけなら、わたしも匠海を支えなきゃって思えるんだけど···、その取引先の担当さんが問題で······」
「えっ?取引先って、どこの会社なのよ。」
「···トールガーデン社。」
わたしがそう言うと、賢ちゃんは目を大きく見開き「あぁ!あの大手の?!」と言った。
「うん。」
「ちょっと待って。トールガーデンの担当者って···、もしかして宝生って女じゃない?」
賢ちゃんの言葉に驚いたわたしは「え?賢ちゃん知ってるの?!」とつい声が大きくなってしまった。
すると賢ちゃんは、辺りをキョロキョロと確認したあとで、わたしに顔を近付けてきて、耳元でこう囁いた。
「あの女、有名なのよ。"男を喰い漁る"で。それから、こないだうちの店にも来てたわ。"雨笠さん"って言ってたのを耳にした時は、まさかとは思ったんだけど···」
賢ちゃんはそう言ったあと、もう一度周りを確認してから、わたしの耳元でこう続けた。
「"今の取引相手の雨笠さん、彼女がいるらしいけど、わたしに掛かれば簡単よ。すぐに奪ってみせる。雨笠さんなら、わたしの本命にしてあげてもいいかも"って。」
それを聞いた瞬間、わたしの身体はゾワッと鳥肌が立ち、心臓を握り潰されたような感覚に陥った。



