眠れぬ夜を抱きしめて


そして定時になり、わたしは一人で会社を出た。

(一人で帰るの久しぶりだなぁ···)

そう思いながら空を見上げると、オレンジ色の空が広がっていた。

すると、「よっ!椿沙!」と大知に話を掛けられ、わたしは「あぁ、大知。お疲れ様。」と返事を返した。

「あれ?今日一人?雨笠さんは?」

辺りを見回しながらそう言う大知。
わたしは「今日は、トールガーデンの人と食事してから帰って来るみたい。」と言うと、大知より先に歩き出した。

「えっ!まさか宝生さんと?!」

そう言いながら、わたしについてくる大知は、何故か嬉しそうだった。

「んー、誰とまでは聞いてないけど、そうじゃないかな。」
「マジか···、宝生さん行動が早いな。」
「どういう事?何が言いたいの?」
「あ、いや、ごめん···」

自分が失言したと思ったのか、反省の色を見せる大知。
すると大知は、「じゃあ、俺が椿沙を家まで送るよ!」と言い出した。

「別にいいよ。すぐそこだし。」
「いや、すぐそこでもさ!雨笠さんが心配するだろ〜?あっ!それとも、一緒に飯食ってく?雨笠さんが飯食って帰って来るなら、椿沙一人で食べるんだろ?」

普段なら鬱陶しいと感じる大知の誘いだが、今日は何だか行ってもいいような気がして、わたしは「じゃあ、奢ってくれるなら行く。」と言った。

「よっしゃ!じゃあ、飯食いに行こ!何食べたい?」
「んー、そうだなぁ···、今日はパスタ気分かも。」
「じゃあ、すぐそこにあるダリパスタ入るか!」

そう言って、わたしは大知と一緒にパスタ屋さんに入った。

大知と二人で外食するのは久しぶりだ。
わたしたちは窓際のソファー席に案内され、席についた。

「パスタ久しぶりだなぁ〜!何にしよう。」
「わたしハーフサイズでいいなぁ。」
「昼も食ってないのに?ちゃんと食わないと、それ以上痩せたらどうすんだよ。」
「そんなに痩せてないから大丈夫。」
「えぇ〜、そうなのかぁ?見たことないから分かんないなぁ〜。」

わざとらしくニヤニヤしながらそう言う大知。
わたしはそんな大知に「変態っ。」と浴びせたあと、「わたし、茄子とトマトのモッツァレラパスタにする。」と言った。