そしてその日、クリスマスイブという事もあり、定時になると社員たちが足早に帰宅して行った。
家族でクリスマスを過ごす人もいれば、恋人とデートに出掛ける人もいるのだろう。
特に予定もないわたしは、大知に腕を絡ませながら大知を連れ去って行く船田さんの強引さに苦笑いを浮かべながら、ゆっくりと帰る支度をしていた。
「あっ、志筑さん!お疲れ様!」
そう声を掛けてくれたのは、帰り支度を済ませ、まさにこれから帰ろうとしといる柳田課長だった。
「お疲れ様です。」
「今日はホワイトクリスマスイブだなぁ!」
そう言う柳田課長の言葉から、ふと窓の外へ視線を移すと、窓の外はフワフワと粉雪が舞う雪景色だった。
「柳田課長は、帰ったら家族でクリスマスですか?」
「まぁな!嫁にケーキ買って来てって頼まれててさ!」
「じゃあ、早く帰らないと!」
「だな!じゃあな、お疲れ!」
そう言って爽やかに帰って行く柳田課長は、既婚の二児の父だ。
愛妻家で子煩悩で知られる柳田課長は、いつもお子さんを保育園に送ってから出社しているらしい。
課長でありながらも、育休を率先して取得したり、お子さんを持つ家庭の社員への配慮は、他の事業部の上司の誰よりも行き届いている。
そんな気遣いの出来る上司の下で働けている事に感謝しつつも、柳田課長のような家庭が理想の家族像なのだろうな、と考えたりもした。
(さて、わたしも帰ろうかな。)
そう思い、わたしは一人で会社をあとにした。
外へ出ると、チラチラと舞う粉雪がイルミネーションと重なり、より一層クリスマスイブの雰囲気を盛り上げている。
賑やかな街並みを普段通り歩いていると、会社から徒歩7分程で到着してしまう自宅マンションが見えて来てしまい、何だか虚しくなったわたしは足を止めた。
(ちょっと、賢ちゃんに会いに行ってみようかな。)
ふとそう思ったわたしは、今来た方向を引き返し、会社の最寄り駅付近のビル内にある、賢ちゃんが経営する"SEVENS BAL"を目指した。



