それから、わたしたちは恋人としてお付き合いをするようになった。
でも、今までとは特別何も変わらない。
変わった事といえば、眠る時に匠海の腕に包まれながら眠るようになった事くらいだ。
そして今まで、わたしに対して好意を向けてきてくれていた大知だが、あの日を境に必要以上に話し掛けてくる事は無くなった。
大知曰く、「雨笠さんに向ける椿沙の笑顔を見たら、雨笠さんには敵わないと思った。俺には、椿沙をあんな表情にする事が出来ない。」との事だった。
しかし、「まだ諦めたわけじゃないから。」とは言われた。
2月になると、バレンタインデーがあり、わたしはもちろん手作りのガトーショコラを焼いて匠海にプレゼントしたのだが、案の定、匠海は会社から食べ切れない程のチョコレートを持って帰って来て、二人で食べ切るのに苦労した。
3月には、匠海からのホワイトデーのケーキに、わたしの28歳の誕生日もあった為、レストランでお祝いをしてくれた上にプレゼントまで用意してくれていた。
匠海が誕生日に差し出してくれたプレゼントは、某有名アクセサリーブランドのもので、中を開けてみるとネックレスが入っていたのだが、それはただのネックレスではなかった。
「えっ!これ!アイリスがつけてるネックレスに似てる!」
「だろ?これを見た瞬間、そう思って即決しちゃった!」
匠海が選んでくれたネックレスは、『エバー·ファンタジーIII』のヒロインであるアイリスが身に付けている、雫型のネックレスにそっくりだったのだ。
「つけてみてもいい?」
「うん。俺がつけるよ。」
そう言って丁寧に箱からネックレスを取り出した匠海は、わたしの首にネックレスをつけてくれた。
「どう?」
「うん、似合ってる。」
「ありがとう、大事にするね。」
わたしはこの時、大切な人から誕生日プレゼントを貰ったのが初めてだった。
幼い頃、誕生日すら祝ってもらった記憶はなく、わたしにとっては忘れられない誕生日となった。



