眠れぬ夜を抱きしめて


「あの日、賢司さんの提案から椿沙と一緒に宅飲みする流れになって···、しかも偶然にも隣同士でさ。会社で椿沙を見掛けた事はあったけど、まさかこんなに仲良くなれるなんて思いもしなかったけど、あの時···背中を押してくれた賢司さんには感謝してる。」

匠海がしみじみとそう言うので、わたしもその隣で「それは、わたしも同じだよ。」と相槌を打った。

「まさかうちでゲームして、泊まる流れになるだなんて思わなかったけど···、あの時、涙を流しながら眠る椿沙の事が忘れられなくてさ。あの日から、ずっと···椿沙の事ばっかり考えるようになって、気付けば···好きになってた。」

匠海はそう言ってわたしを見つめると、優しく微笑み、それからわたしの手を取って優しく握り締めた。

「椿沙···?」
「はい。」
「椿沙の過去の事は、よく理解してる。その上でだけど···、俺と、付き合ってくれませんか?椿沙の事、全部受け止めるよ。俺は椿沙と一緒に、椿沙のペースで、一緒にこれからの人生を歩んで行きたい。」

真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる匠海。
その気持ちが嬉しくて、わたしの胸はいっぱいになり、気持ちが溢れ出すと共に瞳から涙が零れ落ちた。

「わたしで、いいの?」
「俺は、椿沙がいい。」
「···わたしも、匠海がいい。」

わたしが涙を流しながらそう言うと、匠海は泣き出しそうな表情をグッと堪えて微笑んでくれた。
そして「ありがとう。」と言って、繋いだ手を強く握り締めてくれた。

「ねぇ、匠海?」
「ん?なに?」
「···抱き締めてほしい。」

わたしがそう言うと、匠海は恥ずかしそうに笑い、「いいの?」と確認し、わたしが頷いてから、わたしの背中に腕を回し、ぎこちなくも優しくわたしを包み込んでくれた。

「あったかい···」

わたしはそう呟きながら、匠海の背中に腕を回し、抱き締め返したのだった。