「何か、ごめんね。」
匠海と並んで歩きながら、わたしがそう言うと、匠海はサッパリした様子で「何が?」と言った。
「何か···、大知とあんな雰囲気になっちゃって······」
「いや、あれは俺が悪いから。邑瀬さんの気持ちを逆撫でするような事を言ってしまったからね。でも···、あれはわざとなんだ。」
「えっ?」
「いつまでも、曖昧にしておきたくなかったから。邑瀬さんに、俺の気持ちをしっかり伝えておきたかったからさ。」
匠海はそう言うと、ニコッと微笑み、わたしまでつられて微笑んだ。
そして、自宅マンションに着くと、わたしは"匠海からの話"の前に自宅でシャワーを浴び、ラフな服装に着替えてから匠海宅へとお邪魔した。
わたしがすっかり居心地が良くなってしまっている匠海宅のソファーに腰を掛けると、匠海もわたしの隣に腰を下ろす。
それから少し緊張したような面持ちで匠海は、「来てくれて、ありがとう。新年会のあとなのにさ。」と言った。
「ううん、それより迎えに来てくれて、ありがとう。寒かったでしょ?」
「いや、俺は平気だよ。早く椿沙に会いたくて、早めに着いちゃってさ。」
匠海はそう言うと、「へへっ。」と笑った。
「それで···、話したい事なんだけど···」
落ち着いたトーンになり、匠海が言う。
わたしは真っ直ぐ匠海を見つめると、「うん。」と頷いた。
「あ、その前に、椿沙に聞いてほしい事があるんだ。聞いてくれるかな?」
「うん、もちろんだよ。」
「ありがとう。」
匠海はそう言って微笑むと、「前にさ、椿沙が自分の生い立ちの事を話してくれただろ?だから、俺も···話しておきたくて。」と言い、そこから静かに匠海は、自分が育ってきた環境の話を始めた。



