眠れぬ夜を抱きしめて


「椿沙も二次会行こうぜ。」
「わたしはさっき、飯塚さんに二次会には参加しないって言ってあるから。」
「でもよぉ。」

わたしが大知が掴む手を振り解こうとしながら、大知と言い合っていると、そこに「その手、離してくれないかな。」と冷静な声が間に入る。

ふと声がする方に振り向いてみると、すぐ傍には匠海が立っていた。

「な、何で雨笠さんが居るんですか?」

わたしの手首を掴んだまま、匠海に向かってそう言う大知。

匠海は「夜に一人で帰すのは心配だからね。」と言い、大知の手を掴んで、わたしの手首を解放させた。

「それなら、俺が帰り送りますから。ご心配なく。」
「いや、俺が迎えに来たかったんだ。椿沙と邑瀬さんを二人きりにしたくなかったから。」

匠海がそう言うと、大知は奥歯を噛み締めるような表情をし、それ以上は何も言わなかった。

「椿沙。寒いから早く帰ろうか。」

匠海は大知からわたしの方に視線を移すと、穏やかな表情でそう言った。

「うん。」

わたしはそう返事をし、振り返ると第2事業部の人たちに「お先に失礼します、お疲れ様でした。」と挨拶をした。

「お疲れ様!」
「お疲れ〜!」

そう返事を返してくれる人たちの中、大知だけは無表情で黙ったままだった。

「じゃあ、帰るね。お疲れ。」

わたしは大知にそう言うと、匠海と共に歩き出した。
そんなわたしを黙って見送る大知は最後まで何も言わず、ただただわたしを見つめていた。