次の日、わたしはいつも通り匠海と出勤をし、それぞれの事務所に向かう為にエレベーターで別れた。
いつも通り事務所に入り、いつも通り業務について、お昼になればいつも通り休憩を取る。
この日も何も変わらず、いつもの一日がこのまま終わるはずだった···――――
「あのぉ、志筑椿沙さんって、あなたですよね?」
お昼休憩中、食後のカフェラテを飲むわたしにそう話し掛けてきたのは、何と第4事業部の高山さんだった。
高山さんから話し掛けられたのは、初めてだ。
「はい、そうですけど。」
「ちょっといい?話があるんだけど。」
明らかにわたしを睨み付け、不機嫌そうな高山さん。
わたしは目の前に座る大知と目を合わせると、席を立ち、コツコツとヒールを鳴らして歩く高山さんのあとについて歩いて行った。
そして高山さんに連れて来られたのは、給湯室だった。
高山さんは胸の前で腕を組み、明らかに敵視する瞳でわたしを睨み付けた。
「志筑さん、あなた何なの?雨笠さんをたぶらかして、どういうつもり?」
「たぶらかす···?」
「わたし知ってるのよ!あなたが雨笠さんに言い寄ってるの!第2事業部のマドンナだか何だか知らないけど、そういうの迷惑なの!」
(第2事業部のマドンナ?何の話?)
「雨笠さんはね、わたしに気があるのよ!だから、邪魔しないでくれる?!あなたには、邑瀬さんがいるじゃない!それなのに、雨笠さんにも手を出そうとするなんて!とんでもない女ね!」
わたしへの不満が止まらない高山さんの言葉を、とりあえず聞くわたし。
高山さんは、給湯室の外まで聞こえてるのでは?と思う程の声量で怒りを口に出し続け、興奮状態だった。
「わたしはね!今まで、誰にもフラレた事がないの!わたしの誘いを断る男も居なかった!それなのに、雨笠さんは···!」
高山さんがそう言い掛けたところで、給湯室のドアが開いた。
そして、その開いたドアの向こうから姿を現したのは、いつもの柔らかい表情とは違う、何処か険しい表情をした匠海だったのだ。



