眠れぬ夜を抱きしめて


その日から、わたしは匠海と共に出勤し、帰りも一緒に帰宅をした。
ゲームをする時間はなくなったが、帰宅をしてから一緒にキッチンに立ってご飯を作り、ご飯を食べ、クリアしてしまった『エバー·ファンタジーIII』の余韻に浸りながら語り、お風呂と着替えの時間だけ一時帰宅をして、夜は匠海のベッドで一緒に眠った。

本来であれば、男女が同じベッドで寝るなど、恋人同士でなければ考えられないかもしれない。
しかし、匠海とだったら、それが出来てしまった。

匠海が男性である事は理解している。
でも何故か、不安などない。

わたしは匠海が隣に居てくれないと、眠れないのだ。
多分、隣に居てくれるのは、誰でもいいわけじゃない。
きっと、これが大知だったら···、眠れないかもしれない。

匠海だから···、わたしは安心して眠りにつけるのだ。
その理由を聞かれても答える事は出来ないが、わたしの心が匠海を必要としているのだ。



新年が開けて、二週間が経った。

この日は、第4事業部の新年会があるらしく、匠海は新年会に出席する為、一緒に帰る事が出来ない。
毎年、新年会と忘年会はどの事業部も合同で行うのだが、今年からは別々で行うようにするらしい。

「なぁ、椿沙!今日は第4事業部が新年会だから、帰り一人だろ?」

帰りにそう話し掛けてきたのは、嬉しそうな表情を浮かべる大知だ。

わたしは何だか気分が乗らず「うん、まぁ、そうだね。」と素っ気なく返事をした。

「久しぶりに飲みに行かないか?!」
「んー、やめとくー。」
「えぇー!なんでぇ?!」
「そんな気分じゃないのー。じゃあね、お疲れー。」

わたしは大知にヒラヒラと手を振ると、一人で会社を出た。

会社の外の入口付近では、これから新年会に向かうのであろう第4事業部の社員たちが集まっていた。
その中には、当然匠海の姿もあり、その隣には高山さんの姿もあった。

(高山さん、匠海との距離近くない?)

そんな事を思いながらわたしはその横を通り過ぎ、駅がある方向へと歩いて行った。