大晦日のあの日から、わたしは毎日匠海の家で過ごしていた。
ただ一緒にご飯を食べ、ゲームをして、同じベッドで眠るだけ。
特別な事はない。
ただそれだけで、わたしの心は安定していて、満たされていた。
そして、いよいよ仕事始めの前日。
年末年始の休みの最終日だ。
わたしはいつものように、匠海の隣で、匠海がプレイする『エバー·ファンタジーIII』を見ていた。
ゲームのストーリーも終盤になり、あとはラスボスを倒すだけとなった。
第三形態まであるラスボスに苦戦しながらも、ギリギリのところでラスボスを倒した匠海。
「はぁ〜!倒せたぁ〜!」
達成感から、脱力してソファーの背もたれにもたれ掛かる匠海に「やったね!」とわたしが言うと、匠海は両手をわたしに向けて出し、わたしはそれに応えるようにハイタッチをした。
ラスボス戦のあと、世界が平和になり、壊れてしまった王国や町が徐々に復興していくシーンに入る。
理由があり犠牲になってしまった仲間も居たが、力を合わせて生き残った仲間たちが集う中、主人公のブランク一人だけ姿がない。
ブランクはラスボスを倒した後、もうモンスターが蘇る事の無いように一人封印の為に戦地に残ったのだ。
王国の女王となったアイリスは、城の窓から空を見上げ、いつ帰還するかもわからないブランクの帰りを待つ。
月日は流れ、国が平和になって5年。
よそ風が吹く丘の上に一人の騎士の足元が映る。
そして、その騎士はゆっくりと王国に足を踏み入れ、国の平和が訪れた5年目を記念して行われているパレードを横切り、城の中央でパレードを眺めていたアイリスの目の前に現れる。
アイリスはその人物に気付くと、慌てて立ち上がり、ドレスの裾を上げながら階段を駆け下りる。
それから城の外に出ると、真っ白の薔薇の花束を持ったブランクが微笑んでいたのだ。
アイリスは泣きながらブランクに駆け寄り、思い切り抱きつく。
字幕はないが、アイリスの口元が「遅い···」と言っているように見える。
その言葉に「ごめん。」と返すブランク。
一度身体を離し、見つめ合う二人。
その向こう側では二人の再会に涙を滲ませている仲間たちの姿があった。
ブランクは屈み込み立膝をすると、アイリスに向かって白い薔薇の花束を差し出す。
まさにプロポーズをするシーンである。
涙を流すアイリスは頷くと花束を受け取り、再びブランクに抱きつく。
そしてアイリスを抱き寄せたブランクは、アイリスの頬に手を添え、キスをして物語は終了するのだ。



