眠れぬ夜を抱きしめて


「お母さんは···、助けてくれなかったの?」

わたしの過去の話を聞き、そう尋ねる匠海。
わたしは視線を落とすと「母は、おじさんの事を信じたの。おじさんは、わたしがおじさんを誘ったって言ったみたいで。」と答えた。

「そんなぁ······」
「だから、高校を卒業するまで耐えるしかなかったの。高校を卒業してからはすぐに実家を出て、一人暮らしを始めて、親とは縁を切った。もうわたしには親は居ないものだと思ってる。」

わたしがそう言うと、匠海はそっとわたしの手を取り、握り締めてくれた。
そんな匠海の事をわたしは見上げると、匠海は切なく微笑み、「大丈夫。椿沙は一人じゃないよ。俺が居るから。」と言ってくれた。

「ありがとう···」
「でも、俺なんかでいいの?うちに泊まるのは全然構わないけど···、怖くない?」

匠海の気遣いと優しさで胸がいっぱいになる。
わたしは匠海の言葉に頷くと、「前にいつの間にか眠っちゃった時があったでしょ?自分でも不思議なんだけど、匠海とだったら···安心して眠れたの。」と答えた。

「そっかぁ。安心して眠れてくれたなら、それが一番だよ。」

すると、そうこう話している内にテレビの中から除夜の鐘の音が鳴り響いてきた。
どうやら、いつの間にか年を越してしまったらしい。

「カウントダウンする前に、年越しちゃったね。」

そんな事を言って笑い、わたしたちは「今年もよろしくお願いします。」と賢まって言い合った。

「椿沙、今年は···去年よりももっと、椿沙の事を知っていきたい。」
「うん···、わたしも。」

そう言ってわたしたちは、再び乾杯をし、シャンパンを一本開けてから、二人同じベッドへと入った。

最初は緊張して眠れるか不安だったが、連日の睡眠不足とお酒の力もあり、わたしはすんなり眠りに落ちる事が出来た。
悪夢で目が覚める事もなく、幸せな気持ちのまま、わたしは匠海の温もりに触れながら深い眠りへと誘われた。

その時、スマホに大知からの『あけおめ』メッセージが届いている事にも気付かずに···――――