「実は俺も、帰る実家はありません。両親が居ない俺を育ててくれたのは祖父母で、その祖父母も他界してしまってるので、俺にも帰る場所がないんです。」
思いもよらない雨笠さんの告白に、何と言っていいのか分からず黙り込んでしまうわたし。
わたしは勝手に、雨笠さんは裕福な愛ある家庭で育ったものだと思い込んでしまっているところがあった。
「何か俺たちって、似てますね。」
そう言って微笑む雨笠さんの姿を見ていると、何故だか途轍も無く愛しくなってきてしまった。
(何だろう、この感情は···、無性に···抱きしめたいっ···!)
「そうですね、似てますね···わたしたち。」
わたしがそう言うと、雨笠さんは嬉しそうに微笑み、わたしもつられて微笑んでしまう。
雨笠さんと一緒に居ると、不思議な気持ちになる。
この気持ちは何だろう···――――
「志筑さん。」
「はい。」
「もし良かったら、大晦日も一緒に過ごしませんか?」
「えっ、いいんですか?わたしなんかと···」
「俺は、志筑さんと一緒に過ごしたいです。一緒に、年を越したいです。」
何の曇もない雨笠さんの真っ直ぐな言葉が、スッと胸に入ってくる。
わたしは「はい。」と返事をすると、自然と「わたしも、雨笠さんと一緒に年を越したいです。」と答えていた。
そしてその後、「おやすみなさい。」と言い合い、自宅に戻ったわたしだったが、布団に入ってもなかなか眠れずにいた。
"志筑さんと一緒に過ごしたいです"――――
雨笠さんから言われたその言葉が頭から離れない。
(一緒に年越しする約束しちゃった···)
社会人になってから今まで、誰かと年越しをした経験がないわたし。
賢ちゃんと同居していた頃だって、賢ちゃんは純一さんと一緒に過ごす為に年末年始は留守にしていた。
初めて誰かと過ごす大晦日。
それが、雨笠さんになるだなんて···――――
わたしの興奮はなかなか治まらず、目を閉じてはいるが、頭の中は雨笠さんの事でいっぱいになっていた。



