それから21時には、今年の忘年会もお開きとなった。
ぞろぞろとみんなが店の外へ出る中で、大知が「一緒に帰らない?」と誘ってくれたのだが、大知の事がお気に入りな部長たちが「邑瀬!二軒目行くぞー!」と強引に大知を連れて行ってしまい、部長たちに腕を引かれる大知は両手を顔の前で合わせ「ごめん!」とでも言うように申し訳なさそうに行ってしまった。
(大知も大変だなぁ。)
わたしは部長たちの付き合いで二軒目に連れて行かれる大知の後ろ姿を眺めながらそんな事を思い、近くでタクシーを拾って自宅マンションへと帰宅した。
「ただいまぁ。」
帰宅すると、玄関からリビングの明かりが見えて、同居している友人が居る事が分かった。
バーで働いている友人がこの時間帯に家に居る事は珍しい為、不思議に思いながらもわたしはリビングへと向かった。
「あれぇ?賢ちゃん?」
リビングのドアを開けながらわたしがそう言うと、そこにはリビングのソファーの周りをソワソワとしながら歩く、友人で同居人の山戸賢司(やまべ けんじ)の姿があった。
賢ちゃんはわたしの方を向くと、ハッとした表情をして「あっ!椿沙!おかえり!待ってたのよ〜!」と言いながら、両手の小指を立てて足早にこちらへ歩み寄って来た。
ちなみに賢ちゃんは、いわゆる"オネェ"である。
「待ってたって、どうしたの?」
「まぁ、とりあえず座ってちょうだい!話があるの!」
賢ちゃんはそう言うと、わたしの肩に手を置き、ソファーへ座るように促した。
そして賢ちゃん自身もわたしの隣に腰を掛けると、胸に手を置き、一呼吸ついた。
「で、どうしたの?話って?」
「···椿沙。落ち着いて聞いてちょうだい。」
「何?何があったの?」
神妙な面持ちの賢ちゃんの姿に少し不安になるわたし。
すると、賢ちゃんは真剣な眼差しでこう告げた。
「あたし、純ちゃんにプロポーズされちゃったの。」



