眠れぬ夜を抱きしめて


それから買い物を済ませ、マンションに帰宅したわたしたち。
わたしは一時、自宅に帰宅して着替えてから雨笠さん宅へとお邪魔する事にした。

「インターホン押さなくても、そのまま入って来て構いませんよ。」

雨笠さんにそう言われ、帰宅したわたしはクローゼットの前で立ち往生していた。

(着替えるっていっても···、どんな服装で行ったらいいんだろう。家で過ごすのに、キッチリした服装もおかしいし、かと言って普段の部屋着姿は見せられない···)

悩みに悩んだわたしは、結局無難にラフな格好で行く事にした。
スウェット生地のホワイトパンツに、背中に『エバー·ファンタジーIII』のロゴが入った黒いオーバーサイズのパーカーを来て、長い髪の毛は高い位置でお団子にした。

あとは先日借りて着てしまった洗濯済みの雨笠さんのロンTを持ち、準備はOKだ。

「お邪魔しまーす。」

雨笠さん宅のドアをそっと開け、中を覗いて見る。
奥には、リビング明かりが見え、微かに良い香りが漂ってきた。

(もう料理始めてるのかな?)

そう思いながら、ゆっくりと雨笠さんの家に入ると、リビングのドアを開け、顔を覗かせた。

「あ、志筑さん。いらっしゃい。」

そう言って迎え入れてくれた雨笠さんはキッチンに立ち、黒のパーカーにエプロン姿だった。

「お邪魔します。あ、あのぉ、こないだお借りした服持って来たんですけど···」

わたしがそう言うと、雨笠さんは料理をする手を止め、こちらへと歩み寄って来た。

「あれ、わざわざ洗濯してくれたんですか?」

わたしが差し出すロンTを受け取りながら雨笠さんが言う。

「はい、さすがにそのままお返しするわけにはいきませんから。」
「わざわざありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。」

そんな会話をしていると、雨笠さんが何だかわたしをジッと見ている気がして、わたしは咄嗟に自分の髪に触れると「あ、何か変ですかね?」と訊いてみた。

すると雨笠さんは「あっ!いえいえ!すいません!」と慌てて否定したあと、「いつもと違う髪型だったので、つい···。お団子似合いますね。」と言い、照れくさそうに微笑んでいた。