そして、全社員が待ちに待った定時がやって来た。
「今年もお世話になりました。」
「また来年な!」
「良いお年を〜!」
そんな言葉が飛び交う中、わたしは柳田課長の元へ行き、「今年もお世話になりました。」と挨拶をした。
「いや、こちらこそ。今年もお世話になりました。また来年もよろしくね。」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「それじゃ、良いお年を。」
「柳田課長も、良いお年を。」
柳田課長とそう挨拶を交わし、事務所を出るわたし。
すると、後ろから勢い良く大知が走って来て、「椿沙!ちょっと待てよぉ!」と呼び止めて来た。
「わぁっ、何よ。」
「先に行くなよぉ。」
「別に大知を待つ必要ないでしょ?」
「本当、椿沙は冷たいよなぁ〜!」
「そう思うなら、放っといてくれない?」
「あ!いや!違う違う!そうじゃなくて!」
そんな会話を交わしながら廊下を歩き、エレベーターに乗って一階へと向かう。
その間、ずっと大知はわたしの後をついて来ては、何だかんだ言いながら離れようとしなかった。
すると、会社の入口の近くに雨笠さんの姿があり、どうやらわたしを待ってくれていたようだった。
雨笠さんはわたしに気付くと優しく微笑み、こちらに向かって小さく手を振ってくれた。
「えっ、雨笠さん?」
わたしの傍でそう呟く大知。
わたしは雨笠さんに駆け寄ると、「お待たせしてすいません。」と頭を下げた。
「いえ、俺も今来たところなので。」
雨笠さんとわたしの様子を見て、何かを悟った大知は急に大人しくなると「椿沙。」とわたしを呼んだ。
「近い内に連絡するから。だから、まだ今年最後の言葉は言わない。」
真剣な表情でそう言う大知は、ふと雨笠さんの方を見ると、「お疲れ様でした。今日は譲りますけど、俺も負けませんから。」と言い、一礼をしてからその場を去って行った。
その大知の後ろ姿はどこか切なく、何だか申し訳ない気持ちになってしまったのだった。



