同じ会社に勤め、家も隣同士だというのに、こうして面と向かうのは数日ぶりで、少し緊張してしまう。
わたしが「あ、お疲れ様です。」と言うと、雨笠さんは控えめに「お疲れ様です。」と言った後、「あの、少しお話したいんですけど、時間いただけませんか?」と言った。
「えっ、わたし、とですか?」
思いもよらぬ雨笠さんの言葉に、自分を指差し間抜けな返答をするわたし。
そんなわたしに雨笠さんは「はい、志筑さんとお話しがしたいです。」と真っ直ぐな瞳で言った。
そしてわたしは、大知に「ちょっと行って来るね。」と一言告げてから席を立ち、雨笠さんと共に、この時間帯はあまり誰も寄り付かない給湯室へと向かった。
「突然、お呼びしてしまって、すいません。」
「いえいえ、大丈夫です。」
そう話しながらも、何となくぎこちないわたしたち。
すると雨笠さんは、一呼吸置いてから話し始めた。
「今日で、今年の出社も最後なので、その前にどうしても···志筑さんと話したくて。同じ会社でも、事業部が違うと、なかなか会えないものですね。」
雨笠さんはそう言うと、照れくさそうに微笑んだ。
「そうですね。家も隣なはずなのに。」
わたしがそう言うと、わたしたちはふと目が合い、お互いにクスリと笑った。
「あっ、それで、話しなんですけど···」
「はい。」
「大した事じゃないんですが···、もし良かったら連休中、うちに遊びに来ませんか?」
まさかの雨笠さんからのお誘いに、思考が停止してしまうわたし。
(うちに、遊びに、来ませんか···?)
「あっ!いや!無理なら無理って、ハッキリ言っていただいて構いません!ただ···、あの日以来、ゲームをする時に隣に志筑さんが居ないと···、なんていうか、寂しくて···」
照れくさそうにしどろもどろになりながら、そう言う雨笠さんの姿は今までに見た事がなく、(こんな一面もあるんだなぁ)なんて考えてしまう。
わたしは背の高い雨笠さんを見上げると、「遊びに行っても、いいんですか?」と再確認した。
「志筑さんが嫌でなければ、是非!」
「じゃあ、お邪魔させていただきます。」
わたしがそう返答すると、雨笠さんの表情はパッと明るくなり、と思えばヘタッとしゃがみ込んでは「良かったぁ···」と安堵の独り言をこぼしていた。



