眠れぬ夜を抱きしめて


「こんな事考えてても仕方ない。寝よっ!」

わたしはそう独り言を呟き、ソファーから立ち上がると、ストーブの電源を消し、リビングの照明を落としてから寝室へと向かった。

冷たく冷えたベッドに潜り込み、身体を丸く縮める。
そして目を閉じてみるが、なかなか寝付けず、何度も寝返りをうってしまう。

身体は疲れており、欠伸は出るものの眠りに落ちる事が出来ない。

その理由をわたしは充分過ぎる程に理解していた。

(でも、賢ちゃんとの同居を解消したんだから、一人でも眠れるようにならなくちゃっ···)

わたしは目を固く閉じ、必死に眠ろうとした。

しかし、ウトウトとしては思い出したくもない悪夢が蘇り、目を覚ましてしまう。

結局わたしは、まともに眠る事が出来ないまま朝を迎えたのだった。



休みが明けた月曜日。
この日は、今年最後の仕事納めの日だ。

明日から年末年始の連休が始まる為、社員たちは今年最後の業務に力を入れている。

わたしも明日からの休みに向けて業務を遂行させていき、キリの良いところでお昼休憩を取る事にした。

(はぁ···、眠っ。)

土日もまともに睡眠がとれていないわたしは欠伸が止まらず、怠い身体を引き摺りながら社員食堂へと向かった。

(今日は、あまり食欲ないなぁ。)

社員食堂の入口に立つメニュー表を眺めてみたが、食欲が湧かず、わたしはランチを注文せずに食堂内にある自販機でカフェラテを淹れ、いつものテーブル席へとついた。

すると、少し経ってから「お疲れ〜!」といつもの調子で大知がやって来た。
大知は日替わりランチを持って、わたしの向かい側に座ると、心配そうな表情を浮かべてわたしの顔を覗き込んだ。

「どうしたんだよ、顔色悪いぞ?」
「んー、ちょっと寝不足でね。」
「寝れてないのかよ。俺が添い寝してやろうか?!」

調子の良い大知の言葉に「遠慮しとくー。」と返すわたし。

すると、「あのぉ、志筑さん。」とわたしを呼ぶ声が聞こえてきて、聞き慣れないその声にわたしは驚きながら顔を上げる。

その視線の先に立ち、わたしを呼んだのは、何と雨笠さんだったのだ。