眠れぬ夜を抱きしめて


「そんなわたしの話より、大知はどうなの?昨日は、船田さんとデートして来たんでしょ?」

わたしは自分の分のシーザーサラダを取り分けながら、大知をチラッと見ながら言った。

「別に、船田さんとはデートじゃないし。誘われて、断り切れなかったから行っただけ。」
「でも船田さん、大知にゾッコンじゃない?」
「んー、別に悪い人じゃないんだけどぉ···、船田さんとは20歳も離れてるし···」
「年齢なんて関係ないじゃない?」

わたしがそう言うと、大知は「それは恋愛感情があればの話な?」と言って、トマトを口の中へと放り込んでいた。

「俺はさ、ちゃんと好きな人、いるから。」

そう言って視線を落とす大知の表情は珍しく真剣で、わたしは思わずそんな大知を見つめた。

「椿沙はさぁ···、俺の事、どう思ってんの?」
「大知の事?」
「うん······」

大知の質問に、戸惑うわたし。
よく考えてみれば、大知の事をどうこう考えた事はなく、話しやすい同期としか思った事がなかったのだ。

「大知の事かぁ······」
「好きか嫌いで言ったら?」
「まぁ···、人間としては好きかな。」
「人間としてかぁ···、男としては?」

そう訊かれ、「んー···」と答えに迷うわたしを見て、大知は「やっぱり無いよなぁ。」と肩を落とした。

「···いや、でも!ここで諦めたら、俺じゃない!」

大知は勢い良くそう言うと、生ビールを一気に飲み干した。

「なぁ、椿沙!」
「な、何?」
「俺にチャンスをくれないか?!」
「チャンス?」
「俺···、椿沙に男として好きになってもらえるように頑張るよ!」

拳を突き出し、そう意気込む大知。
しかし、わたしはどうしても前向きに考える事が出来なかった。

「でも···、わたしは"分かった"とは言えないよ。大知の気持ちに応えられるか分からないし···」
「それでもいいよ!その時はその時で、俺の努力不足ってだけで、椿沙が悲観する必要ないし!ただ、俺が一方的に頑張るだけだから!」

そう言う大知は、「そうと決まれば、飲むっきゃない!あっ!でもこれは、酒の力で言ったわけじゃないからな!」と訂正しつつ、生ビールを追加で注文し、自分を奮い立たせるように明るく振る舞っていたのだった。