眠れぬ夜を抱きしめて


それから時刻は20時を過ぎ、そろそろ忘年会も終盤に差し掛かって来た頃、わたしはカウンターの向こう側に居る店長さんに最後のカルピスサワーを注文した。

(もう少しで帰らなきゃいけないなぁ。今日は眠れるかな······)

そんな不安を抱きながら、お酒の力を借りて眠れるように時間ギリギリまで呑もうとするわたし。
わたしは、店長さんが「はい、お待ちぃ。」と言って差し出してくれる、今日最後のカルピスサワーを受け取ると、「ありがとうございます。」と言った。

すると、すぐ傍から「おう、椿沙(つばさ)!飲んでるか?」と言う声が聞こえてきて、わたしは反射的に横を振り向いた。

そこに立っていたのは、ほんのり頬を染める同期の邑瀬大知(むらせ たいち)だった。
大知は、わたしと同じ第2事業部で人当たりが良く、上司やベテラン社員たちから可愛がられるようなタイプだ。

「まぁまぁかな〜。」
「そうかぁ?いつもより、あんまり飲んでないんじゃないか?」

わたしの顔色を窺いながらそう言い、わたしの隣の椅子を引いて、腰を下ろす大知。
わたしはそんな大知に「大知は、結構飲んでるみたいね。」と言った。

「まぁ、そこそこな!」
「大知は色んな人に飲まされちゃうもんね。」
「勧められると断れないからさぁ〜!」

大知はそう言いながら、「はははっ!」と笑っていた。

きっとあちこちのテーブルに呼ばれては、その先々でお酒を飲まされていたのだろう。
人が良い大知はいつもそれを断れず、その場の雰囲気を壊さない為に平気なフリをして無理してでもお酒を飲んでいる事をわたしは知っている。

「あんまり無理するんじゃないよ?」
「大丈夫大丈夫!明日休みだし!帰ったらグッスリだなぁ〜!」

そう言って、大知は腕を上に上げて伸びをしながら大きな欠伸をした。

普段から周りに気を遣い過ぎるところがある大知は、かなりお疲れのようだ。
人付き合いが苦手なわたしは、大知の気遣いや柔軟さと、誰とでも打ち解けられる人柄に尊敬をして部分もあった。