定時の18時、5分前になると、既に帰る支度を済ませた社員たちが待機をし始める。
すると、黒いダウンに身を包み、リュックを背負って大知が「椿沙、帰れそうか?」と声を掛けて来た。
「うん、大丈夫だよ。」
「じゃあさ、18時になった瞬間、急いで会社出ようぜ!」
「何でそんな急ぐの?」
「いやぁ、万が一の事を考えて···」
「万が一って?」
わたしが大知にそう訊くと、そんな会話をするわたしたちに気付いた飯塚さんが「もしかして、邑瀬のデート相手って志筑さん?」と声を掛けてきた。
「えっ、まぁ、はい〜!」
照れ笑いを浮かべながらそう返事をする大知に、飯塚さんは「行くなら早く行った方がいいぞ!また船田さんが突撃して来るかもしんねーから!」と助言をする。
すると、周りに居る他の社員たちも「18時まであと1分だし、もう行っちゃえば?」とか「もし船田さんが来たら、何とか誤魔化しとくから!」などとわたしたちの後押しをして来る。
「えっ、でもぉ···」
わたしが遠慮しようとすると、大知が「椿沙、お言葉に甘えちゃおうぜ。」と言い、それから事務所内に居る社員たちに頭を下げながら「皆さん!お先に失礼します!」と言った大知は、わたしの手を掴むと一気に走り出した。
「えっ!ちょ、ちょっと!大知!」
大知に手を引かれるがままに走り出したわたしは、後ろから聞こえて来る「ヒューヒュー!」「邑瀬ー!頑張れよー!」という声に見送られながら、大知と共に急いで会社の外へと飛び出したのだった。
夜のクリスマスの街は、昨日よりも一層輝いて見えた。
明日が土曜日で休日な人が多い事もあるだろうが、街中にある駅周辺は人だらけだ。
繋いだままの大知の手は温かく、ただの同期である大知と手を繋いでいる事に違和感を覚えたわたしは、ふと大知を見上げた。
「いつまで手繋いでるの?」
わたしがそう訊くと、大知は「あ、おっと!わりぃわりぃ!」と言いながら、手を離してくれた。



