眠れぬ夜を抱きしめて


その後、珍しく突然大人しくなった大知のイジケ具合に折れたわたしは、仕方なく大知との呑みに付き合う事にした。
わたしが"OK"を出した途端にいつもの調子に戻った大知は、「よっしゃぁ!」と無邪気に喜び、そんな大知の姿に可愛らしいとさえ思ってしまった。

それからお昼休憩も終わり、午後の業務に入ると、大知が早々に外回りへ出掛ける支度をし始めた。
そんな姿を見た先輩の飯塚(いいづか)さんは「おっ、邑瀬。もう外回り行くのか?」と声を掛けていた。

「はい!今日は定時で仕事終わらせなきゃいけないんで!」
「なんだよぉ!デートかぁ〜?」
「まぁ、そんなとこっすねぇ!」
「おいおい、いつの間に彼女できたんだよ!」

飯塚さんに茶化されながら「ニシシッ!」と笑う大知は、「じゃあ、行ってきまーす!」と勢い良く事務所を飛び出して行った。

「邑瀬もとうとう彼女できたのかぁ〜。」
「まぁ、あいつはモテるからな。」
「それより、邑瀬くんに彼女できたなんて船田さんが知ったら、発狂するんじゃない?」
「うわぁ···、面倒くさい事になんなきゃいいなぁ。」

大知が出掛けてからの事務所内では、そんな会話が繰り広げられており、内心わたしは不安になっていた。

(船田さんって、大知の事···単なるお気に入りじゃなくて、本気なのかな······)

そんな事を考えながら、わたしは目の前のパソコンとにらめっこをしていた。


そして、定時15分前になると、大知が外回りから戻って来た。

「戻りましたぁ!」
「おっ!おかえりぃ!無事に帰って来れたな!」

そう言って大知を出迎える飯塚さんに、大知は「何とか間に合わせました!」と親指を立ててやり切った表情を浮かべていた。