「あっ、大知。おはよう。」
「椿沙、今日って雨笠さんと一緒に来たの?」
「えっ?なんで?」
「いやっ、一緒に歩いてるとこ見たから。」
何だか面白くなさそうな表情でそう言う大知に、わたしは「うん、まぁ。」と素っ気なく答える。
大知はそんなわたしに「椿沙って、雨笠さんと仲良かったっけ?」と更に突っ込んだ話をしてきた。
「元々は、話した事なかったけど······」
「けど?」
「実は、偶然引っ越した先のマンションが一緒で、それで。」
「えっ!最近引っ越したマンション?!」
「うん、そう。」
「マジかよ。」
驚きそれ以上は何も聞いてこなくなった大知を追い越し、わたしは事務所に入ると自分のデスクについた。
そして、いつも通りの業務が始まる。
しかし、いつも通りの業務をこなして過ごしているはずが、頭の片隅には、どうしても雨笠さんの顔がチラついて離れなかった。
どうも、昨日の雨笠さんと過ごした時間がわたしの中では強く印象に残っているらしい。
それだけではない···――――
無意識だったとはいえ、今朝まで一緒に同じベッドで眠ってしまっていたのだから。
午前の業務も終わり、お昼休憩の時間になると、大半の社員たちが社員食堂に集まる。
わたしはいつも通り社員食堂の後ろ側のテーブル席につくと、わたしの中での定番ランチであるおにぎりと豚汁の定食を頂こうと手を合わせた。
すると、何気無く社員食堂の入口付近が目に入る。
そこには雨笠さんの姿があり、派手な巻き髪の女性社員に話し掛けられていた。
(あの人、確か···第4事業部の高山(たかやま)さんだ。)
高山さんはまだ入社2年目の23歳で、その若さと美貌から男性社員からの人気は高かった。
しかし、良い顔をするのは男性社員のみで、裏では女性社員からは煙たがられていた。



