眠れぬ夜を抱きしめて


「わたし、昨日の事···全然覚えてなくて······」

わたしが申し訳なく思いながらそう言うと、雨笠さんは現時点に至った昨日の出来事を話してくれた。

どうやらわたしは、昨夜飲んでいた缶チューハイを服にこぼしてしまい、雨笠さんの白いロンTを借りて着る事になったらしい。
その後、雨笠さんがトイレに立ち、リビングに戻って来ると、わたしはソファーの上で眠っていたようだ。

雨笠さんはわたしを起こそうと声を掛けてくれたようだが、わたしは一向に目を覚ます気配はなく、ソファーに寝かせたままにしておけないと判断した雨笠さんは、寝室のベッドまでわたしを抱きかかえて移動させてくれたらしい。

「それから、俺はリビングのソファーで寝ようとしたんですけど、志筑さんが俺の服を掴んで···『一人にしないで』って、涙を流していて······」

そう話す雨笠さんの言葉を聞き、わたしは何と恥ずかしい姿を見せてしまったんだと、顔から湯気が出そうな程に熱くなった。

しかし、雨笠さんは切ない表情を浮かべ「あんな悲しげな志筑さんを見たら、一人には出来なくて···、失礼ながら隣で眠らせていただきました。すいません。」と、ベッドの上で正座をし、わたしに頭を下げてきたのだ。

わたしはそんな雨笠さんの姿に慌て、「いえいえ!雨笠さんは何も悪くないです!わたしがそんな無理なお願いをしてしまって!本当に申し訳ないです!ごめんなさい!!!」と、二人で頭を下げ合い、ふと目が合った拍子にフッと笑い合ったのだった。

それから、その日もわたしたちは仕事だった為、わたしは隣の自宅に一時帰宅し、シャワーと着替え、化粧を済ませて、雨笠さんと共に出社した。
所属する事業部が違うわたしたちは、エレベーターで別れ、わたしは5階の事務所へと向かう。

すると、後ろからタタタッと小走りする足音が聞こえて来て、ふと振り返って見ると、そこには大知の姿があり「おはよっ!」と挨拶をしてきた。