眠れぬ夜を抱きしめて


賢ちゃんに流されるまま、綺羅びやかなクリスマスイブの街に放り込まれた雨笠さんとわたしは、何となく同じ方角を歩き、何となく横に並んで歩いていた。

(イブに雨笠さんと二人で歩いてるところなんて、会社の誰かに見られたら、わたし生きていられないかも······)

そんな事を思いながら、知り合いが居ないか周りを警戒していると、「志筑さんは、どの辺に住んでるんですか?」と雨笠さんの方から話し掛けてくれた。

「あ、会社の近くです。最近引っ越したばかりなんですよ。」
「そうなんですね。俺も割と会社の近くに住んでるんですよ。」
「え、そうなんですか?どの辺りですか?」

と、話をしながら歩いていると、何という偶然なのか、雨笠さんとわたしは同じマンションに住んでいたのだ。
それだけではなく、住んでいる階数も同じでお隣さん同士だったのだから、驚きを通り越して、わたしたちは顔を見合わせて笑ってしまった。

「最近、隣に引っ越して来た人が居ると思ってましたが、まさか志筑さんだったなんて。」
「すいません!まだご挨拶に行けてなくて!」
「いえいえ、気にしないでください。」

雨笠さんはそう言うと、701号室の鍵を解錠し、ドアを開けた。

「どうぞ。」

そう言って、わたしを中へ促してくれる雨笠さん。
わたしは少し緊張しながらも「お邪魔します。」と言い、雨笠さん宅へ足を一歩踏み入れた。

中の造りは我が家と一緒だが、やはり男性の部屋だけあり雰囲気は全く違う。
雨笠さんはシューズボックスの上の棚に置いてあるガラスの器に鍵をカランと入れると、茶色い革靴を脱いで部屋の中へと進んだ。

わたしもローヒールのパンプスを脱いで揃えると、雨笠さんに続き、部屋の中へと入って行く。
1LDKの雨笠さん宅のリビングは、無駄なものがなくシンプルでダークブラウンの家具で統一されていた。

「どうぞ、座ってください。」

そう言う雨笠さんのお言葉に甘え、わたしはロングコートを脱ぐと、ソファーの脇に丸めて置き、2人掛け用のグレーのソファーにそっと腰を下ろした。

「あっ、コート預かりますね。」

そう言って、雨笠さんはわたしのコートをハンガーに掛けてくれた。

「すみません、ありがとうございます。」
「いえ。今、飲み物も出しますね。何がいいですか?」

スマートにテキパキ動く雨笠さんを見て、やはり普段から仕事が出来る人は違うなぁと感心してしまう。
雨笠さんはキッチンまで行くと冷蔵庫を開け、中から2種類のチューハイとビールを持ち上げて見せてくれた。