眠れぬ夜を抱きしめて



雨の日は、嫌いだ。

あの夜の事を思い出してしまうから···――――




* * *





冬が本気を出し始める、凍てつく夜風が肌を刺す師走。
チラチラと粉雪が舞う夜、わたしは会社の忘年会に参加していた。

毎年、個人経営の居酒屋"赤ちょうちん"を貸切にして行う忘年会は、今日も賑やかだ。
しかし、大人数での飲み会が苦手なわたしは一人でカウンター席に座り、肉厚で美味しい豚串を頬張りながら、カルピスサワーを飲んでいた。

「あれ?志筑(しづき)さん、独り?あっち行かないの?」

社員たちがテーブルを囲む小上がり席を指しながらそう声を掛けてくれたのは、わたしが配属されている第2事業部の課長、柳田(やなぎだ)課長だ。
どうやら、トイレに立った帰りに声を掛けてくれたらしい。

「こっちの方が落ち着くんです。」

わたしがそう答えると、柳田課長は「そっか。まぁ、気が向いたらおいでよ!」と言って、自分が座っていた場所に戻って行った。

柳田課長が座るテーブル周りでは、事務員の女性たちが楽しそうにある一人の男性に注目していた。
それは、第4事業部のエースである雨笠匠海(あまがさ たくみ)さんだ。

雨笠さんはわたしよりも2年先輩で、クールで清潔感がある爽やかな雰囲気に高身長な上に万人受けするような美形の持ち主で、女性社員からの人気が高い。

部署が違う為、雨笠さんとの接点はないが、彼の話をよく耳にする程、男女共に注目されている社内では有名な存在だった。