「あっちぃ……」
恭弥くんが重い鉄の扉を閉めると、そこには梅雨が終わり、初夏の少しだけ暑い風が吹いていた。
「今年も夏きたわー……あ、そうだ、今年は咲那と浴衣デートしたいなー」
そう言って、柵のそばまで歩いた恭弥くんが、振り向かずにまた口を開いた。
「……なぁ咲那。涼が去って、お前、また1人で抱え込もうとしてんだろ」
「え……?」
「駅でお前が泣いてるの見て、正直、気が狂いそうだった。あいつとの思い出を全部、今すぐ俺が奪い取ってやりてーって」
恭弥くんがゆっくりと私の方を向く。
いつもは余裕たっぷりに笑う彼の瞳が、今はひどく真剣で、わずかに震えているのがわかった。
「咲那。俺、チャラいとか言われてるけど、本気になったらそれ以外興味ねーんだわ……中学の時から、ずっとお前だけ見てた。涼の隣で笑うお前を見て、何度あいつから奪いに行こうとしたか分かんねーよ」
初めて聞く、彼の本音。
涼くんと付き合っていた裏で、彼がどれほどの想いを押し殺して私を守ってくれていたのか。
その重みが、風に乗って私の胸に熱く押し寄せる。

