涼くんを見送ったその日の夜。
1人で部屋にいると、どうしても彼との楽しかった思い出や、傷ついた記憶がフラッシュバックして、胸がキュッとなった。
──もう、涼くんはいないんだ。
暗い部屋で膝を抱えていると、突然スマホが震えた。
画面には『恭弥くん』の文字。
「……もしもし?」
『……おー、起きてた。泣いてねーか確認しにきただけ』
恭弥くんの少し低い、ぶっきらぼうな声。
それだけで、部屋の空気がふわりと温かくなった気がした。
『あいつのこと思い出してしんみりしてんだろ……俺が、その記憶全部、俺の声で上書きしてやるから。今日は寝るまで電話切んなよ』
「……恭弥くん、わがままだよ」
『あぁ、わがままだよ……お前が俺のことしか考えられなくなるまで、わがまま言ってやる』
受話器越しに聞こえる彼の穏やかな呼吸音が、トクトクと私の鼓動を早めていく。
結局、彼が他愛もない学校の話をしてくれるのを聞きながら、私はいつの間にか、これまでにないほど深い眠りについていた。
