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本部のロッジは、すでに片付けが終わっていて、ひっそりと静まり返っていた。
「失礼します……」
長机の上。
バインダーを置こうとして、ぽつんと置き忘れられていた一台のスマートフォンを見つけた。
「あ……これ、涼くんのだ……」
黒いシンプルなケース。
その隙間から、小さく折りたたまれた紙の端っこがはみ出している。
……届けなきゃ。
そう思って手に取った瞬間、不意に画面が明るくなった。
【母:涼、向こうの学校の入学手続き、今日中に済ませるって弁護士さんに伝えたから。引っ越しの準備、帰ってきたらすぐ始めてね。】
【母:家が差し押さえられる前に、最低限のものだけはまとめましょう。咲那さんには、もうちゃんとお別れ言えた?】
「……っ、え?」
指先から、体温がサーッと引いていく。
画面に並ぶ、あまりにも残酷な単語。
『差し押さえ』『弁護士』『向こうの学校』……。

