彼、八代 依織の横を素通りしてここから近くに停められている車へと向かった。
「お疲れ様です。…あれ?依織さんは、」
「依織なら私のカフェラテ買いに行った」
「あぁ、なるほど」
いかにも怪しい黒い車の傍に立つのは強面の男。
その男は私を見つけるなり車のドアを開けてくれた。
車内は外と違って温かく心地良い。
程よい音量でかかっている音楽は恐らく彼の趣味だろう。
私が乗った後に彼も運転席に乗り込んだ。
「寒くないですか?」
「うん、大丈夫」
気遣いがまさに紳士。
依織とはまるで大違い。
その後、スマホを弄りながら依織の帰りを待っているとようやく到着したのか私が乗っている後部座席のドアを勢いよく開けた。
「ちょっ、」
「ほらよ。お望みのカフェラテだ」
「…ほんと最悪」
ドアを勢いよく開けたせいで外の冷気が一気に入ってきて、さっきまでの心地良い温かさが一瞬で消えた。


