家の前に立つ
私の足は

そこから
前へと
進めなかった


彼のお母さんは
そっと
私の背中に
手をのばした


茶の間へと
案内された

彼の姿はなかった


チェックの
ピンクのマフラーを
はずしながら

周りを見渡した


彼のお母さんが
出してくれた
座布団の上に
座り
マフラーを
横に置いた時だった


『来てくれ
ありがとう』


私の後ろから
彼の声が
聞こえた