お人形と呼ばれるあたしにも

心臓はあるし
血液は巡るし
涙は流れる

何度貴方を傷付けただろう

貴方の涙は溢れて
繰り返し繰り返し
あたしの名を叫び


あたしを凝視したその目も

何度もあわせたくちびるも

ピアノを弾くその指も


すべて忘れなければいけないのかな

過去にしなければいけないのかな


セックスフレンドは

過去をほじくり返しても良いことないよ

なんて言ってたけど


貴方の寝顔を眺めるよりも
幸福なことが無いあたしに
それ以上の幸福など
受け入れようとしてないのだから
手に入っても棄ててしまう

愛されてると実感するたび
醒めてゆく愛など
あたしは古新聞を眺めているようで

おかしいね

愛されたいと
強く想えば想うほど

愛からかけ離れてゆき

結局
依存と情になり

しがみついて無様に倒れる

立ち上がる術として
あたしはあたらしい恋をして

同じ夜を繰り返し

愛など成立しない行為に溺れて

またひとり

貴方の寝顔を鮮明に思い出す夜がきて

朝を怖れて涙するんだ