拳よりも、強いもの〜俺たちはいつも『曇天』の中に光を掴んだ

二番が前に、三番が後ろに

それは、
何度も繰り返された夜の中で、
自然に形になった。

教えられたわけじゃない。
決めたわけでもない。

ただ、
そうなるのが一番、楽だった。

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ある夜、
他校の集団と鉢合わせた。

人数は、向こうが多い。
空気は、張りつめている。

仲間の一人が、
小さく息を呑んだ。

その瞬間、
悠矢が一歩前に出る。

何も言わない。
ただ、立つ。

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視線が、
一斉に集まる。

それでいい。

怒りも、挑発も、
全部引き受ける。

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その背後で、
愁也が動く。

仲間を散らす。
位置を変える。

逃げ道を確保する。

声は出さない。
拳も、まだ使わない。

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相手の一人が、
前に出てくる。

言葉が荒れる。
空気が熱くなる。

悠矢は、
殴らない。

殴れる距離まで、
 引きつける。

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愁也が、
低く言った。

「今じゃない」

悠矢は、
一歩引いた。

それだけで、
場の温度が下がる。

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その瞬間、
相手は気づく。

囲めない。
逃げられない。

詰んでいる。

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愁也が、
前に出る。

「今日は、
 やめよう」

その一言で、
終わった。

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帰り道、
仲間の一人が言う。

「二番が出ると、
 安心するな」

「三番が静かだと、
 今日は勝ちだ」

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悠矢は、
それを聞いて笑った。

愁也は、
何も言わなかった。

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その夜から、
言葉が生まれた。

二番が前に、
三番が後ろに。

合言葉でも、
自慢でもない。

ただの事実。

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悠矢は、
前に出ることで、
迷わなくなった。

愁也がいる。
それだけでいい。

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愁也は、
後ろを見ることで、
恐怖を管理した。

悠矢がいる。
だから、決断できる。

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我捨楽は、
強さの話をされるようになった。

だが、
本当の強さは、
この配置にあった。

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二番が前に、
三番が後ろに。

それは、
信頼の並び順だった。