拳よりも、強いもの〜俺たちはいつも『曇天』の中に光を掴んだ

我捨楽の結成

相棒になると決めたからといって、
世界が急に変わるわけじゃない。

変わったのは、
集まり方だった。



最初に声をかけてきたのは、
二年の先輩だった。

「最近、
 お前ら一緒にいるよな」

悠矢が前に出る。
愁也は、半歩後ろ。

それがもう、
癖になっていた。



「面倒ごと、
 まとめてくれねぇか」

その一言で、
だいたい察しはついた。

学校の中にも、
外にも、
小さな衝突が増えていた。

誰かが前に立たなければ、
無駄に広がる。



「条件がある」

愁也が言う。

先輩は、
少し驚いた顔をした。

「殴るのは最後」
「話ができるなら、先にやる」
「仲間を勝手に増やさない」

静かだが、
一つも引かない。



先輩は、
少し笑って言った。

「面白ぇな」

「じゃあ、
 やってみるか」



集まったのは、
癖のある連中ばかりだった。

腕っ節に自信がある者。
居場所を失った者。
理由は違っても、
共通点があった。

一人じゃ、
 どうにもならなくなっていた。



名前は、
後から付いた。

放課後の教室。
誰かが冗談半分で言った。

「俺ら、
 ガシャガシャしてんな」

「捨て身でさ」



「我捨楽」

誰かが書いた文字を、
愁也がじっと見る。

「字、
 面白いな」



「意味は?」

悠矢が聞く。

愁也は、
少し考えてから言った。

「今は、
 なくていい」



それで決まった。

深い意味も、
立派な理念もない。

ただ、
呼びやすかった。



その日から、
我捨楽は動き始める。

悠矢は、
自然と前に立つようになった。

怒りを引き受け、
視線を集める。

二番隊長と呼ばれるのは、
いつの間にかだった。



愁也は、
後ろで全体を見る。

人数。
時間。
逃げ道。

必要な時だけ、
前に出る。

三番隊長。

本人は、
一度も名乗ったことはない。



我捨楽は、
強かった。

だがそれ以上に、
崩れなかった。

無茶をする者がいれば、
止める。

危ない夜があれば、
避ける。



悠矢は、
後になって気づく。

楽だったのは、
殴れるからじゃない。

考えなくてよかったからだ。



我捨楽、結成。

この時、
まだ誰も知らない。

この名前が、
いつか意味を持つことを。