拳よりも、強いもの〜俺たちはいつも『曇天』の中に光を掴んだ

画面越しの夜

彼の話は、
いつも途中で止まる。

「まぁ、そんな感じ」

そう言って、
笑って誤魔化す。

⸻

画面越しの悠矢は、
穏やかだ。

過去の彼を知る人間が聞けば、
きっと驚くだろう。

⸻

「喧嘩、
 怖くなかったの?」

彼女が聞くと、
悠矢は少し考える。

「怖かったよ」

「でも、
 後ろにいたから」

⸻

その言葉に、
彼女は引っかかる。

「後ろ?」

⸻

悠矢は、
一瞬だけ黙る。

そして、
珍しく饒舌になる。

⸻

「相棒がいてさ」

「俺が前で、
 あいつが後ろ」

「何も言わなくても、
 分かるやつ」

⸻

止まらない。

名前。
立ち位置。
声。

話しすぎたと気づいた頃、
悠矢は照れたように言う。

「……ごめん」

⸻

彼女は、
静かに首を振る。

「いいの」

「その人の話、
 好き」

⸻

その夜、
彼女は初めて思う。

この人には、
もう一つの物語がある。

それは、
自分が入れない場所。

でも――
尊くて、眩しい場所。