拳よりも、強いもの〜俺たちはいつも『曇天』の中に光を掴んだ

相棒という名前の居場所

卒業が近づくにつれて、
夜は減った。

呼び出しも、
噂も、
いつの間にか遠ざかっていた。

我捨楽は、
解散したわけじゃない。

ただ、
必要なくなった。



それぞれ、
進路が決まり始める。

部活。
仕事。
彼女。

悠矢も、
例外じゃなかった。



ある放課後、
久しぶりに二人きりになった。

屋上。
風が強い。

フェンス越しに、
街が見える。



「もう、
 前に出ることも減るな」

悠矢が言う。

愁也は、
頷いた。

「十分だろ」



しばらく沈黙。

高校に入った頃と、
同じ距離感。

だが、
中身は全然違う。



悠矢が、
ぽつりと言う。

「俺さ」

「お前いなかったら、
 多分、どっかで終わってた」



愁也は、
すぐには答えなかった。

フェンスを掴み、
遠くを見る。

「……俺もだ」



それだけ。

でも、
それで全部だった。



相棒って、
何なんだろう。

毎日会うことじゃない。
同じ道を歩くことでもない。



戻れる場所があること。

それだけでいい。



愁也は、
これからも静かだろう。

悠矢は、
これからも前に出るだろう。

でも、
背中の感覚は、
一生消えない。



この章を、
未来の彼女は、
静かに閉じる。

そして思う。

「友情って、
 恋よりも深いことがあるんだ」